転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


446 お風呂には入らないとダメなんだって



「お風呂、ですか?」

 ご飯を食べ終わってみんなでデザートの果物を食べてたら、お爺さん司祭様がニコラさんにお風呂に入った事ある? って聞いたんだ。

「うむ。部屋に通されたときに案内した者が、この宿には風呂があると伝えたであろう?」

「ええ。それは聞きましたけど」

 ニコラさんたちはね、今までお風呂に入った事ないんだって。

 だから宿屋さんの人にお風呂があるよって教えてもらってたんだけど、入るつもりなかったんだってさ。

 でもね、それを聞いたお爺さん司祭様は、それじゃダメだよって言うんだ。

「何故ですか? 濡らした布で体をふくだけでも、十分汚れは取れると思うんですけど……」

「確かにこの宿に泊まる者の中には、風呂に入らず体を福田家の者もおる。しかしそなたたちはこの宿を出た後、ルディーン君の家に住むことになるのであろう?」

 ニコラさんたち、ここには何日かしか泊まらないけど、その後は僕が買ったお家に住むことになるよね?

 そこに葉さ、ロルフさんちのメイドさんや執事さんもお勉強に来ることになってるでしょ。

 ロルフさんちはお金持ちだから、そういう人たちはみんな何日かに一回はお風呂に入ってるんだよってお爺さん司祭様は言うんだ。

「そなたたちはこれから、ルディーン君に使える事になるのであろう? なのに使用人見習いでさえ入っておる風呂にそなたたちが入っておらぬとなれば、この子のメンツをつぶす事になるではないか」

「あっ」

 お風呂って沸かそうと思ったら。普通は薪代がいっぱいかかるんだよ。

 だからもしニコラさんたちがお風呂に入ってないと、僕が入れてあげないんじゃないかって思われちゃうんだってさ。

「これがもしルディーン君がこの街に住むというのであれば、この子が入るためにメイドたちが風呂を沸かすであろうから、たとえ入らずとも問題は無い。周りからも自分の意志で入らないと解るからな。しかし村に帰った後、そなたたちが風呂に入らなければ、中にはそう考えるものがおったとしてもおかしくは無かろう」

「確かにそうですね」

「でも私たち、お風呂の入り方なんて知らないし……」

 ニコラさんたち、さっきご飯の食べ方がおかしくって周りに笑われるんじゃないかって思ってたでしょ?

 それとおんなじで、お風呂の入り方なんて知らないから、中で他のお客さんに笑われちゃうんじゃないかなぁって心配してるみたいなんだよね。

「ねぇ、司祭様。僕んちに住めるようになってから、お風呂に入るんじゃダメなの?」

 だから僕、お爺さん司祭様に僕んちで入ればいいんじゃないの? って聞いてみたんだよね。

 だって僕んちだったら他に誰もいないから、知らなくたって笑われる事なんてないもん。

 わざわざここで入んなくっても、僕んちで入ればいいじゃないかって思ったんだ。

 でもね、それじゃダメってお爺さん司祭様は言うんだ。

「なんで?」

「それはな、この宿に泊まっておる事を皆が知っておるからだ」

 僕たちが今泊まってる『若葉の風亭』ってね、イーノックカウの中でも結構有名な宿屋さんなんだって。

 だからここにお風呂がある事は、みんな知ってるらしいんだよね。

「この宿に数日間宿泊したのに、そこで風呂の作法を覚えずに館に入ってみよ。一緒に泊まっておったわしやルディーン君も恥をかくのだ」

 僕が買ったお家にお風呂が無かったらよかったんだけど、ロルフさんとバーリマンさんが水を汲む魔道具やお風呂を沸かす魔道具をつけてくれるからいつでも入れるようになっちゃうでしょ?

 なのにお風呂がある宿屋さんに泊まっといて、そこでお風呂の入る方を教えとかなかったらおかしいでしょってお爺さん司祭様は言うんだ。

「でもさ、誰がニコラさんたちのお風呂の入り方、教えるの?」

「うむ。その事なのだが」

 お爺さん司祭様はね、そう言うと僕の方をじっと見たんだ。

 でもね、僕はなんでみられてるのか解んなかったもんだから、頭ををこてんって倒したんだよね。

 そしたらそれを見たお爺さん司祭様が、すっごい事を言い出したんだ。

「ルディーン君が一緒に入って、この娘らに教えると言う訳にはいかぬのかな?」

「司祭様。僕、女の子じゃないよ?」

 まさかお爺さん司祭様が僕の事を女の子だと思ってたなんて。

 これを聞いた僕は、すっごくびっくりしたんだ。

 でもね、よく聞いたらそうじゃなかったみたいなんだよね。

「いや、それは解っておる」

「そうなの? じゃあ、なんであんなこと言ったのさ」

「それはな、まだ幼いルディーン君ならば、この娘らと一緒にお風呂に入っても問題は無いのではないかと考えたのだ」

 こういう宿屋さんだとね、小さい子が一人でお風呂に入るのは危ないからって、お父さんやお兄ちゃんがついて来てない時はお母さんと一緒に入るんだって。

 だからお爺さん司祭様は、僕だったら一緒に入っても大丈夫なんじゃないかなぁって考えたらしいんだ。

 でもね、僕、もう一人でお風呂に入れるくらいおっきいもん。

 なのにもしニコラさんたちと一緒にお風呂に入ったら、あんなにおっきいのにまだお姉さんたちと一緒に入るんだってみんなに思われちゃうんじゃないかなぁ?

「ダメだよ。だって僕、もうおっきいもん」

「そうか、ダメか」

 だからね、僕は一緒に入れないんだよって言ったら、お爺さん司祭様はちょっとがっかりしたお顔になっちゃった。

「えっと、やはり無理をしてお風呂に入らなくても……」

「先ほども言ったであろう。そういうわけにはいかぬのだ」

 そんな僕とお爺さん司祭様のお話を聞いてたニコラさんがね、無理そうならお風呂に入らなくてもいいんじゃないの? って聞いてきたんだ。

 でもね、お爺さん司祭様はどうしても入んなきゃダメって言うんだよ。

「でも、誰にも教えてもらわずに入るなんて、そんなの怖くて私たちには無理です」

「うむ。確かにこの食堂にすら入れなかったことを思うと、その主張には頷くしかないが……」

 お部屋の中でも、ニコラさんたちは汚したら怖いからって椅子にも座ってなかったでしょ?

 なのに3人だけでお風呂に行かせたら、やっぱりそこでも何にもできなくなっちゃうんじゃないかなぁ。

 ここにレーア姉ちゃんかキャリーナ姉ちゃんがいたらよかったのに。

 僕は男の子だから一緒に入れないけど、お姉ちゃんたちだったら一緒に入って教えてあげられるよね。

「でも僕の魔法だと、お姉ちゃんたちを連れてくる事、できないしなぁ」

 ドラゴン&マジック・オンラインには何人かをいっぺんに別の場所に連れてけるゲートって魔法があるんだけど、それは僕がなれる一番上のレベルになっても使えない魔法なんだよね。

 だからそんな事考えても意味が無いんだけど、

「おお、そう言えばその手があったか」

 僕の独り言を聞いたお爺さん司祭様が、すっごく嬉しそうなお顔でこう言ったんだ。

「何、簡単な事だよ。教えられるものがおらぬのならば、来てもらえるように頼めばよかったのだ」



 なんか中途半端なところで終わった感じがしますが、どう考えてもあと1000文字やそこらで終わりそうにないので今回はここまでという事で。

 さて、お姉さんズの苦難ですが、泊まる部屋、お酒&おつまみと来て今度はお風呂です。

 これってある意味、今までで一番大変なんじゃないかなぁ?

 なにせ生まれてから一度も体験したことがない事ですから。

 そりゃあ凄く立派な家具や食事には気後れするかもしれません。

 でも初めてのもの、それも本来なら一生縁が無いはずのものですからねぇ。

 人は自分が理解できないものや得体のしれないものほど恐れると言います。

 おまけにお爺さん司祭様は、人を呼んでお風呂の入り方を教えようというのですから……お姉さんズ、頑張れw


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